最強プロモーション・心理コントロールの仕掛け人・プロデュース・ブランディング・集客コンサルティング
2008年11月09日
客観性と自己主張のバランス

私は以前、このニューヨーカーの条件で、「勘違いも大切だ」と書いたことがある。
しかし、自分を成長させない勘違いもあると痛感する出来事があった。

インターンで働くカメラマンから私が彼をプロフェッショナルだと認めていないとなじられたことがある。学生のレベルで考え、適当に使い、得するところだけ取るつもりなのかと。

私は愕然とした。きっとこれまでにひどい目にあったんだなと同情した。
しかし私は、プロかどうかよりも彼の仕事の結果を客観視し、また彼の仕事に対する姿勢を見ていた。

私はその人がプロであるかどうかの判断ではなく、人間として一流か一流ではないかと思っている。それは、食えるか食えないかだけの問題ではない。

仕事の質はもちろんのこと、周囲とよい関係を持ち、快適な環境を築き上げるコミュニケーションも一流の条件だ。

NY在住の日本画家の千住博さんと対談した時の言葉を思い出した。

千住博さんは、言わずと知れた世界的に活躍する日本画家だ。NY在住にも関わらず、日本への教育啓蒙のため、京都造形芸術大学の学長も務めている。
代表作の「ウォーターフォール」は国立国際美術館に展示され、現在では、日本人で一番高値がつく画家と称されている。

そんな千住さんでさえ、自分よりもうまい画家はいくらでもいると言う。

「アマチュアは自分のため、自分の満足のために絵を描く。プロは人に見せるために描き、使命感に裏打ちされている。世の中が必要としているかどうか、それがプロフェッ
ショナルだ」と説く。

その観点からすると、ビジネス界に例を挙げると、かつてのヒルズの富豪などはアマ集団と一笑される。彼らはお金儲けだけで、お金の使い道を知らない。自分のために贅沢三昧するだけ。それではプロとは言えないという。

また、千住さんはプロの条件で一番大切なものは、コミュニケーションだという。

ビジネスはある意味で心が通じなくてはいけない。コミュニケーションを達成させ、絶対的な信頼関係が必要。まずは相手を信じる。無条件を超えた信頼関係、それを「グレートコミュニケータ」と千住さんは呼ぶ。ビジネスを超えた人間関係。画家と画商がビジネスパートナーとしての関係がないと、いい展覧会にならない。仕事を離れて親友になる。

「私はたくさんの巨匠に会っている。共通して言えるのは皆グレートコミュニケータです。
例え相手が学生であっても、人の話をよく聞く。威張った人はいない。シーガルであろうとクリストロであろうと本当に人柄がいい。親身に誰の話でも聞いてくれる」のだという。

NYに来たら自分の意思を主張しなくてはいけないと日本で叩き込まれてくるようだ。


確かにNYはそういう所だが、言いたい放題言えばいいと言うものでもない。
日本人のいい意味での謙虚さや、客観性や冷静さも必要だ。NYは低賃金から役者でも写真家でも仕事はある。ダンス学校でクラスをとっていればダンサーと呼ばれる。

日本ではある程度、人に認められない限り「ダンサー」なんていわれない。アメリカは自分がプロであると自称した時から、相手が認めようが認めまいが、プロだと言える。だから自称プロが多い。しかし本当のプロは相手が認めるものだ。

すごい人に限って自分は「すごい」と言わないものだ。謙虚さと人の話を聞く姿勢を失わずに、このなんでもありのNYにいるからこそ、客観性と自己主張のバランスを大切にしたいものだ。

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板越ジョージ
http://amedori.exblog.jp/

東京・葛飾生まれ。在米20年。中学3年間はジャニーズJr.。
高校卒業後、バイク便で留学費を稼ぎ、単身渡米。サウスカロライナ大学国際政治学部卒業。
在学中にバックパックを背負い世界35カ国を放浪。イスラエル、ロシア、チェコ、グアテマラにも留学。
95年に広告代理店業イタショーアメリカを創業。7つの会社を経営し、株式公開直前までいったが、
9・11の影響で沈没。多額の借金を背負った。

現在は、アメリカン★ドリームパブリッシングなど3つの会社とNPO法人をNYと東京で営む。
著書に「とにかくどこかの会社にもぐりこむための77のヒント」、
週刊SPA!の3年半の連載をまとめた「リベンジ人生道場」(扶桑社)等。
9・11直後に発刊した「グラウンド・ゼロ」は全国ベストセラーにランキングした。