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2008年03月05日
運を引き寄せる圧倒的な努力

私の自宅近くに、2年以内にレストランが3回潰れた場所がある。そこに06年11月、LAを拠点としたおまかせ寿司専門店「佐々舟」がオープンした。いわくつきのこの場所に、アメリカ人にはまだ馴染みの薄いおまかせ専門の寿司屋をオープンするなんて無謀だと、誰もが思っていた。

LAの店から暖簾わけしたオーナーシェフの高橋賢二さんは私の親友の友人であり、昨年の我が家の新年会にも参加して頂いた。私に出会う直前に、オープンしてまもない店が、ニューヨークタイムスのレビューに大々的に紹介されたと言う。それまでは一日数人の来店客だったが、掲載後は予約の電話が鳴り止まなかったと嬉しそうに話していた。こんな競争の激しいNYで、なんと運のよい人だと思った。

それから一年後、今年もまた新年会で会った。少し疲れているようだったが覇気があり、どこか安堵感と自信が感じられた。新年の挨拶のあと、近況を訪ねた。「最近少し疲れました。週6日、4時半から仕入れに行って11時半まで働いています」という。私は耳を疑った。4時半とは午前?午後? 

高橋さんはお店をオープンして以来、毎朝4時半に自ら仕入れに行き、夜11時半まで働いているという。そしてLAに住む家族とは離れてお店の上のアパートに住んでいるという。休みは日曜日のみ。体が悲鳴をあげるのも当然だ。

LAの「佐々舟」で寿司職人として4年間修行を積み、LAからNYのこの物件を決め、あとはサインを待つだけの状況でNYに移住してきた。しかし、ここはNY。一筋縄で交渉ごとが進むはずが無い。すったもんだがあり、交渉に4ヶ月も時間を費やされ、弁護士費用などもかさみ、手持ち資金はマイナスからのスタートとなってしまった。

お店をオープンしてからは、お客さんに喜んでもらいたいと、自ら魚を厳選して、100%お任せのお店をつらぬく。てんぷらなどを提供する店もあるが、高橋さんはあくまでも寿司とさしみだけで勝負。だから飽きられてしまわないように努力する。お店に来てもらえないというのはお店を否定されているという意味だ。暖簾わけをしてもらった以上、それでは師匠や弟弟子達に申し訳ない。

NYの厳しい競争下では、例えおいしくても、それだけで人は集まらない。「絶対的な努力をしないと勝てない」と高橋さんは語気を強める。朝の仕入れを行かなければ楽になる。しかし、それをやったら他のお店と同じなってしまう。仕入れをやめるくらいなら1日休むという。生き馬の目を抜くNYで、何百店あるレストランの中で、勝つためにここまで努力しないといけないのかとつくづく思った。ここで生き残っていく店とそうでない店の違いを痛感した。

彼を見て思う。「本当に自分は努力しているのだろうか。」

本当に勝つためには圧倒的な努力が必要なのだと改めて思った。この圧倒的な努力があってこそ、幸運を引き付けるのだと。人それぞれ自分なりに努力しているとは思う。しかし客観的に自分を見つめ、本当に自分に偽りがなく最後の最後まで努力しているのか―。それを知るのは自分のみであり、悔いなく生きる条件である。勝利の女神はこういう努力者に微笑むのだろう。