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2005年09月15日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言]◆ 第9回 柔道界の巨人、山下泰裕さんの話

 9月8日から12日まで世界柔道選手権がエジプトの首都カイロで行われていた。
 アメリカでの放送時間を意識して日本時間の深夜に行われる世界陸上などと違って、柔道に関しては上客であろう日本の放送時間が意識された結果か、比較的見やすい時間にテレビ放送されたので、普段柔道を見ることがない方々も含めて、試合の様子をご覧になった方も数多くいることだろう。
 結果についてのコメントは専門家の方に任せるとして、今回はその日本の柔道界の頂点に立つと言っても過言ではない山下泰裕さんについて書いてみたい。

 山下さんは84年に行われたロスアンゼルスオリンピックの95キロ超級の金メダリストで、全日本選手権9連覇、世界選手権3連覇など数々の偉業を成し遂げた往年の世界的な名選手である。
 しかも77年から引退した85年までの8年間、国内外すべての公式戦で負け知らず、203連勝のまま引退したという世界柔道史に大きな足跡を残す巨人なのだ。
 その山下さんは2000年から全日本柔道連盟の男子強化部長として日本選手の強化の中心となる要職を務める一方、2003年からは世界柔道連盟でも教育・コーチング担当理事の要職を務め、世界的な柔道の普及の中心的な役割を果たしているのだ。
 今年3月に山下さんに話を聞く機会があった。都心から約1時間ほど私鉄に乗った神奈川県の駅にある、山下さんが教授を務める東海大学の、壁一杯の本に囲まれた研究室で山下さんは迎えてくれた。
 あの巨体と誰もが知るベビーフェイスは私の事前の印象とまったく変わらなかった。そこで話を始めた山下さんの口から出た言葉は、選手強化とはある意味対極なす内容のものだった。
 現在全日本柔道連盟が標榜するのが「柔道ルネッサンス」。
 その言葉の通り、よき時代の柔道を取り戻そうというスローガンだが、その中心的に役割を果たしているのが委員長の山下さんだ。
 山下さんは、現在の柔道が勝負にこだわるあまり、本来持っている礼節をはじめとする大切なメッセージを失っていると力説する。
 近年日本の柔道界はオリンピックごとに国民の期待を裏切り、そのためにマスコミから叩かれてきた。
 だから自らもメダルの数などの結果だけを求め過ぎて、柔道が持っている人間教育という一番核となる部分を忘れていたのではないか。
 そして、勝利至上主義の結果失われている柔道の本質を取り戻すことが“ルネッサンス”なのだそうだ。
 メダルの数だけでそのスポーツの価値を問うような風潮は、何も柔道だけの話ではない。
 私のようなスポーツに関わるメディア関係者への警鐘でもあるのだ。
 さてその山下さんだが、今回世界選手権がカイロで行われたことを機会に、ロサンゼルスオリンピックの時に勝戦を戦ったラシュワンさんと、当地で子供たちを対象に柔道教室を行ったそうだ。
 まさに往年のライバルと手を携えての世界的な柔道の普及。
 山下さんらしいアプローチだ。

 もし山下さんの活動や考えをもっと詳しく知りたければ、山下さんの公式ホームページにアクセスしてほしい。
 とてもすばらしい出来のホームページで山下さんのメッセージが詳しく掲載されている。


 


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●上村智士郎 さん●

Jリーグチームの応援番組の演出や、CS放送のサッカー中継のディレターを手がける一方、サッカー 専門誌をはじめ各種スポーツ雑誌、スポーツ紙、インターネットサイトに記事を掲載。またスポーツ系インターネットサイトや選手のホームページのプロデュースも行う。現在は女性向けスポーツ情報フリーペーパー「ABUSOLUTELY SPORTS」をプロデュース。

S.blend Inc 代表取締役

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