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2007年01月31日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言] 第56回 ◆JBLとBLリーグ

1月14日JBLのオールスター戦が行われた。そしてスポーツニュースでは、この映像に続いてBJリーグの試合の模様が放送された。このBJリーグも日本プロバスケットボールリーグという組織が運営するバスケットボールの国内リーグなのだ。

JBLは日本バスケットボール協会の下、40年の歴史のある日本のバスケットボールのトップリーグで、現在は一部のスーパーリーグと二部のジャパンリーグで競技されている。一方のBJリーグはこのJBLとは全く別の組織で、昨年から始まった言わば独立リーグだ。本流であるJBLから見ると異分子が集まったリーグだが、どちらかと言うと最近はこのBJリーグの方が注目され、一部にはブームになりつつある。
その二つのリーグの間には歴然とした力の差がある。日本国内のトップリーグはあくまでもJBLであって、BJリーグはこれに及ばないのだ。2年前のスタートの時点でも、JBLから新しく誕生したBJリーグのチームの移籍するトップレベルの主力選手はなく、むしろJBLからチームまるごとBJリーグに加入した新潟アルビレックスからは、主力選手がJBLのチームに移籍してしまった。その力の関係は現在も変わっていない。私の知人がOBのバスケットボール強豪大学では、今春トップの選手がJBLに入り、JBLに入れない選手がBJリーグのチームに入団するそうだ。
そんな力が明確な力関係がありながら、BJリーグが注目され、あたかもBJの方が格上に感じさせている理由には、マーケティング担当している会社の巧みなプロモーションのなども理由に上げられるが、それ以上に大きな理由はBJリーグがプロリーグで、JBLがアマチュアリーグであることだろう。それでもレベルの高い選手がJBLに所属しているのは、JBLが大手企業が居並ぶ社会人リーグで、最近では多くチームで仕事せずバスケットボールだけに専念できる環境が整ってきているからだ。日本特有の企業プロのスタイルだ。しかもプロとは言え小額のペイメントのBJリーグの対し、JBLは企業との雇用関係ではあるがBJより多額の給料が支払われていることも少なくない。またBJリーグ設立の影響を受けて、JBLも個人のプロ契約を認めたので、更に環境はよくなってきている。

このJBLとBJリーグの矛盾は、BJリーグのメジャー感が高まれば高まるほど大きくなる。その矛盾が最高潮になる可能性が来年やってくる。来年は北京オリンピックが開催される。このオリンピックに男子バスケットボールの出場が期待されているが、もし出場が実現しても、BJリーグの選手がこの代表チームに選ばれることはない。そしてBJリーグでプレーする選手は、最初からそれを理解してプレーしている。それがトップレベルの選手がBJリーグでプレーしない理由の一つでもあるからだ。だが観ているファンの中にはこれが理解できていない人も多いだろう。BJリーグのプロモーションが成功し彼らのメジャー感が高まれば高まるほど、時が来てファンを裏切る行為となる可能性があるのだ。BJリーグにはリーグ、チームに多くのスポンサーが付いているが、場合によってはこうした企業をも裏切ることにもなりかねない。

そもそもBJリーグは、JBLでも選手、監督として活躍し、現在運営団体日本プロバスケットボールリーグの代表取締役社長である河内敏光氏の「大学を卒業した選手にもっと多くのプレーする機会を与えたい」という思いから始まった。実際に私は彼が新リーグ創設を表明した直後にお酒をご一緒する機会があったが、その席で彼が口にしたイメージは、ビジネスとはかけ離れ愚直なまでのそうした思いばかりが強く、面を食らった覚えがある。だが、その彼のイメージが具体化し、多くの人が集まり、お金が集まった時に、当初の想いとは少々違った形になってしまったのだろうと感じている。

一方、JBLはBJリーグからの刺激を受けて、「日本バスケットボールリーグ」に組織を変え、ようやく今秋リーグをプロ化する。だがこれで全てが解決するわけではない。そもそも今の状況を生んだ原因である日本バスケットボール協会に内在する数多くの問題はそのままだからだ。世界で最も多くの競技人口を持つ室内競技で、日本では高校までは最も競技人口の多いスポーツでありながら、現在のようなマイナー競技の位置に甘んじているのは、競技団体自身とその利権を独占しようとする関係者のためだ。だからこそ河内氏も連盟を離れ、新リーグ立ち上げを決意したのだ。

JBLのプロ化によって、日本のバスケットボール環境は変わっていくのか? おそらくチームがプロ化し利益を上げなければ状況になって、様々な問題点が白日の下にさらされることだろう。そしてJBLとBJリーグの矛盾もこれによって解決するのか? それぞれの位置づけを明確した中でそれぞれの成功を模索することになるだろう。いずれにしても選手とファンが裏切られない形で着地点を見つけてほしいと思う。