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2006年12月21日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言] 第54回 ◆アジア競技大会

今日のコラムは15日に終わったアジア競技大会から。このコラムをご覧の皆さんのうちどれくらいの方が、12月1日からアジア競技大会という大会が行われていたのをご存知だろうか? 言ってみれば、オリンピックのアジア版で、オリンピックと同様4年に一度行われ、今年はカタールの首都ドーハで開催された。オリンピックほどの話題性の無いし、深夜の放送が多かったので、仕事の忙しい方には縁の無い大会だったかも知れない。」

結果はJOCが目標としていた金メダル50個をギリギリで達成し、更には銀メダル71個、銅メダル77個との合計198個のメダルを獲得するというメダル大漁の大会だった。とは言っても大選手団を送り込んだJOCにとってはある意味最低ノルマ達成といったところだろうか?

そんな中いつか印象に残ったメダルをチェックしてみよう。まずは競泳の北島康介。彼の会心の表情を久しぶりに見ることが出来た気がする。長く日本の競泳界の顔、エースの印象が強いが、ここのところちょっと不調でよい知らせがなかっただけに、彼が3個の金メダルをとったということは明るいニュースだ。もちろん、競泳に関しては、この大会が世界に比べかなりレベルが落ちることも事実ではあるのだが。
一方で、同じ水泳でもショックなメダルがあった。シンクロナイズドスイミングのデュエット、チームの二つの銀メダルだ。長くこの競技で日本は世界の3強に位置し、最近では念願の頂点も見えてきているかに思えていただけに、2種目とも中国の後塵を拝したことは驚きだ。だが再来年の北京オリンピックに向けて、中国は様々な競技で急速に強化をしてきてるだけに、今後もこうした結果が起こってくるであろうことは想像に容易い。

同様に悔しい思いをした銀メダルの象徴は、台湾に敗れた野球が一番だったろう。この競技は競技団体の判断でトップのチームを送り込んではいない。社会人を中心としたアマチュアチームだ。だからプロ選手で構成された台湾に敗れて当然だという考え方もあるが、やはり再考の必要があるのではないだろうか。というのも、かつてプロが参加していなかった時代の日本代表はアマチュアだったがもっと精神的な強さがあったように思える。WBCに優勝したようなチームが出来てしまうと自分たちは所詮二番手という意識が浸透してしまうのだろうか? ちなみに優勝を目指して出場したサッカーは次回のオリンピックに出場する21歳以下のチームで臨んだが、ベスト8にすら進めずに終わった。こちらも全体の編成を考え直す時期に来ているのかもしれない。

さらにメダルラッシュに沸いた陸上競技でも、悔しい銀メダルがいくつかあったが、男子400メートルリレーもその中のひとつだ。この種目の日本は、短距離にトップクラスの選手がいないにも関わらず、近年巧みなバトンワークで世界のトップレベルに肩を並べるようにまでなってきていた。それがタイに同タイムの2位になったのだ。シンクロと同様、トップレベルを維持することの難しさを感じさせられて結果だった。
またお家芸の柔道は男女合わせてメダル四つに終わったことも印象的だった。多くの試合が明らかな力負け。メンバー的にも世界レベルの大会と変わらないメンバーを送り込んでいるだけに、関係者のショックは大きいだろう。やはりアジアだからという油断があったのだろうか? 敗れた選手の表情にオリンピックや世界柔道ほどの悔しさを感じられないのもまた印象的だった。

同じ銀メダルでもがんばった銀メダルとしての代表は、女子のホッケーだろう。決勝戦の相手の中国には手も足も出ない印象(但し、予選リーグでは完勝している)だったが、奮闘の甲斐あって見事結果に繋がった。この結果再来年のオリンピック出場が決定。スポンサーが無くなり資金難が報じられたが、大会直後に代わりに見つかるという嬉しいニュースも聞こえてきている。

この大会でメダル獲得数トップの中国は、金165、銀88、銅63の合計316個のメダルを獲得し、日本との力の差は明白だった。こうした結果に、ライバルの追いつくための論議がされているが、元々人口が違う上に、スポーツに対する意識も、強化の考え方も違うのだから当たり前の結果なのだ。むしろ適度なトップレベルの強化を、スポーツを楽しむ層に結び付けていくのか。幅広い普及にが高齢化の進む日本のこれからのスポーツの考え方に必要なポイントだ。もちろん柔道など、伝統的な競技ではぜひぜひ頑張ってほしいところだが。

次回のアジア競技会は2010年、中国で行われる。その頃はアジアのスポーツ、日本のスポーツはどうなっているのだろう。