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2006年11月15日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言] 第49回 ◆松坂選手のレッドソックス入りに思う。

西武ライオンズの松坂大輔のメジャーリーグ入りが事実上を決まった。長年熱望していた本人にとって待望のメジャーリーグ入りであり、親会社の経営難で財政的に厳しくなっているチームにとって、その移籍金は恵みの水となった。

そうした状況はともあれ、人気選手の流出は続く。今年も松坂以外にもヤクルトの岩村、阪神の井川らの渡米がはっきりしている。松坂ほどの全国区の人気選手ではないが、チームを支える中心選手であり、チームの人気者でもある。

その移籍方法はかつてのようの超法規的なものではなく、ポティングシステムと言って、メジャーリーグ入りを希望する選手の意思を認めたチームが、メジャーリーグのチームに入札を求めるというものだ。以前はチームの意向を無視して渡米した時代もあり、最近ではフリーエージェントシステムによって選手とチームの契約が事実上解除した状態で選手の意思だけで渡米先が決まることが主流だった。チームにとっては現状のシステムの方が移籍金を手にすることが出来るし、1年でも早くメジャーリーグでプレーしたい選手にとっても都合のいい環境のなった。今回の松坂の渡米で西武は、落札したレッドソックスから約60億円の移籍金を手にすると言われている。

そもそも原則的に日本の高校卒業、大学卒業の選手たちが、日本の球団にしか入団できないシステムがおかしい。日本のプロ野球のドラフトで指名された選手を、メジャーリーグのチームは獲得してはいけないという言わば日米間の協定があるのだ。かつてメジャーリーグが遠い存在だった時代ならともかく、今のようの毎年のように日本人選手が渡米する時代になれば、新卒の選手がメジャーにチャレンジする姿も見てみた気がするのだが。

だが今の流れは本当に良いのだろうか? 野球人気の凋落が叫ばれている。それは即ちジャイアンツ人気の衰退だった。ついこの間までプレミアチケットだった東京ドームのチケットは、今は比較的に簡単にネットなどでも購入することができるし、毎日どこかのチャンネルで放送されていたナイターもいつの間にか姿を消した。だが繰り返すようだが、実はこれはジャイアンツ人気の衰退なのだ。ジャイアンツ戦以外すべてのチームの試合を放送しているスポーツCSチャンネル、Jスポーツで最も人気プログラムは、サッカーではなく野球だし、経営的にも柱になっている。ジャイアンツ以外のチームの観客動員は減るどころか増えているところが多い。特にジャイアンツ戦の無いパリーグのチームにその傾向が強い。常に全国区を目指し続けているジャイアンツの人気が落ち、地元を意識して普及活動を進めるようになった他のチームの人気が微増し、全てのチームが平均化したのだろう。その最も分かりやすい例が今年の北海道日本ハムだ。

元々、外から見ていても問題を多く抱えていたジャイアンツと言えども、その人気の急落のきっかけは松井秀喜のヤンキース入りだった。人気選手を並べるジャイアンツと言えども、彼の流出の影響は多大だったのだ。ではそれ以外のチームだったらどうなのだろう。一人の選手の流失がチーム全体にどれだけの影響を与えるか想像もできない。

いま小学生の男の子の中で圧倒的な人気スポーツとして野球が復権したと言う。だがその人気の原因は決して日本の野球ではないだろう。メジャーで多額の年棒を稼ぐ選手たちが彼らにとっての憧れなのだ。今のままでは、日本のプロ野球はアメリカメジャーリーグの、マイナーリーグになってしまうだろう。今でさえ、その傾向は否定できない。これもまた自然の流れなのかもしれない。

ただ可能であれば、新庄がそうであったように、まだ本格的なプレーが出来るうちに日本に復帰し、自分たちを育んでくれた日本のプロ野球の人気を維持するためにプレーを見せてほしいものだ。、