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2006年08月29日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言] 第38回 ◆メディアが作るスポーツシーン

今年4月にお休みをさせて頂いて以来4ヶ月ぶりの再開です。その間に私の拙いコラムが多くの方に読んでいて頂いてることを再認識する機会に出会い、気持ちを新たにしてのリ・スタートです。改めて宜しくお願い致します。

さて、今ちまたを賑わせてるスポーツの話題と言えば、やはり高校野球。今年の夏の甲子園の決勝戦で延長15回を投げ切った上に、再試合でも完投し優勝を果たした早稲田実業のエース斎藤投手がその中心だ。真夏の連投の中、15回でも150キロ近い速球をコントロール良く投げ込む、プロ野球よだれもののピッチャーとしての才能もさることながら、その端正な顔立ちと今どきの若者らしかぬ爽やかな雰囲気が、年齢性別を超えて人気の的となっている。
ガン手術後の療養ため入院中の王ソフトバンク監督の母校である早実と大会3連覇を目指す駒大苫小牧の話題豊富な決勝戦の対戦に、この37年ぶりという延長再試合。斎藤投手と相対するはやはりプロでも即戦力の呼び声高い田中投手。そんな状況が中継するNHKだけでなく、民法各社、スポーツ新聞の注目を集め、取材合戦を繰り広げた。その甲斐もあってか再試合は平日昼間の時間帯にも関わらず、視聴率30%を超えた時間もあったと聞く。まさにメディア露出の相乗効果が図らずも時代のヒーローを生んだ形だ。

だが、こうした偶然の積み重ねだけがスポーツを華々しい舞台にするとは限らない。メディアがその力を駆使してスポーツを話題の中心にすることの方が遥かに多いだろう。今やスポーツイベントはメディア、特にテレビ無くしては語れないことは既知のことだ。

最近のその手法でヒーローとなったのが、亀田三兄弟だろう。その8月2日に行われた長男興毅のWBA世界ライトフライ級タイトルマッチは、TBSがボクシングとしては久々のゴールデンタイムにTV生放送したが、このためにTBSは多くの時間を割いてPRを行った。だが結果的にはその注目の高さが逆効果となった。判定にもつれ込んだ試合は亀田の勝利に多くの疑問が投げかれられ、結局再試合が組まれることなった。
このタイトルマッチまでは圧倒的な強さで勝ち続けてきた亀田だったが、TBS以外の番組に出演したかつての世界チャンピオンたちの多くは彼の強さを認めていなかった。彼らの言葉を借りるまでもなく、タイトルマッチの様子を見ても、稀代の秀でたボクサーではなさそうだ。やはりメディアに作られたヒーローと言っていいのではないか?
だが忘れてはならないことがある。ボクシングを含めた格闘技は必ずしも本当の勝負=“がちんこ”であるとは限らないということだ。実は事前に決められたストーリーに沿って進行されていることも少なくない。勝敗はともかく、少なからず演出が行われているだろうシーンも少なくない。今回の亀田のタイトルマッチで言えば、どんなに彼が1回ノックアウト勝ちを宣言しようとも、プライムタイムで中継をしているTBSにとっては最終ラウンドまで試合が持ち込まれ、高視聴率の中ですべてのCMを露出できることが理想であり、それを亀田サイドに要求していても少しも不思議はないのだ。
10月決まったと言う再試合もTBSの想定内だという憶測だって可能だ。だとすればTBS、亀田ファミリーに日本全国民がしてやられたということになる。

話は戻るが、高校野球の決勝戦は15回引き分けの時点で、なぜ両校優勝にできないのだろう。大会規定では白黒付くまで永遠に再試合が行われるそうだ。高校野球連盟はことあるごとに「教育的見地」という言葉を持ち出すが、両校優勝を許さず白黒つけることはやはり「教育的見地」から見て必要なのだろうか? それとも…。決勝戦再試合1試合で1億円以上の臨時収入が高校野球連盟に入るだろう。
そしてなぜ各メディアはこの再試合について、同様の疑問を投げかけないだろうか?