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2006年03月07日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言] 第31回 ◆Jリーグが始まった

3月4日。今年もJリーグが始まった。ということをこのコラムを読んで頂いてる方々の中で、どれくらいの方がご存知だろうか? 

「今年はワールドカップですね?」「日本代表はどうですか?」「昨夜のチャンピオンズリーグすごかったですね?」 そんな会話をよくする人たちの中には、ワールドカップの出場国やヨーロッパのサッカー事情、日本代表についてはよく知っていても、Jリーグのことになると、とんとご存知ないという方が少なくない。そういう方にその理由を聞くと、大抵は「Jリーグは面白くないからだ」と答える。現に某総合スポーツ雑誌は、すべてのジャンルの中で欧州サッカーの特集と日本代表の特集をする時に、圧倒的に発売数が伸びるらしい。

「Jリーグが面白くない」という人たちの言葉どおり、確かにJリーグとワールドカップの本大会を比べればその差は歴然としている。もちろん、Jリーグにはベッカムのような選手もロナウジーニョのような選手もいない。そう言えばJリーグは以前のように、世界的なトップスターの選手が来日することもすっかり少なくなった。では日本代表は? アジアレベルで戦う日本代表が必ずしもレベルの高い、面白いサッカーしているとは限らない。だが、日本代表ブランドは絶大だ。日本代表戦は例え練習試合(公式戦以外は結局こう呼ばざるを得ない)でも、日本で試合をやる限りはチケットは完売だ。

93年にJリーグがスタートした当初、日本代表の試合は今のような人気は無かった。Jリーグのチケットが入手困難なプレミアムチケットだったのに対して、日本代表のチケットは比較的容易に手にすることができた。この状況が変わり始めたのが96年アトランタオリンピック。そして逆転がはっきりしたのが98年フランスワールドカップの予選だった。20年ぶりのオリンピック本戦出場、ワールドカップ初出場で青いユニホームは勢い付いた。

今年はJリーグのとって、とても大きなターニングポイントとなる年である。なぜなら2000年から始まった、NHK、TBS、スカパー(JSPORTS)による放送権の年間契約の体制の最後の年になるからだ。この放送権料は、Jリーグ(チームではなく機構として)の年間売り上げ110億円のうち50%を超える65億円に達する。

今後もJリーグはテレビ局にとって優良コンテンツであり続けられるか? これは様々な意味でJリーグの命運を握る。浦和レッズをはじめとするいくつかのチームは、自らの企業努力で人気チームとして地位を確かなものにし、今後もその基盤を拡充して行こうとしている。だがその一方で、試合を開催するのがやっというチームも少なくない。そうしたチームにとって、先にあげた65億円を元手とする分配金の多少は死活問題だからだ。93年で10チームで始まったJリーグは、その3倍の31チームで今シーズンを迎えた。少なくともあと5チームは増やす予定だ。このように拡大路線が続く以上、チームの戦力同様に経営力ばらつきで出ても当然なのだ。Jリーグは「地元密着」をスローガンのひとつに、多くの人の心に“定着”した。だが、そうした情報が届いていない人たちも少なくない。その大きな理由の一つがチームの資本力や経営力だったりする。またそのことは即ち人材に繋がる。チームにその力が無かったらどうすればいいのか?

Jリーグ(法人日本プロフットボールリーグ)は先にあげたように年間100億円以上を売り上げる巨大組織である。そのJリーグができることはまだまだある。サッカーの魅力を伝えていくこともそうだ。そして根本となるJリーグのスケジュールを認知させることもその仕事の一つだろう。例えばこれまでもJリーグ開幕に合わせて色々な告知物を製作したり、CMを放送したりしてきた。だがまだまだ十分とは言えない。きっとスポーツニュースを見て「Jリーグ始まったんだあ」と思った人が多いはずだ。方法、内容、チャンネル、そうしたものを見直して、さらに効果的ものにする必要があるのだ。

今、Jリーグは日本のすべての競技団体にとって、先行する指針となっている。Jリーグを進む道を、他の多くの競技団体が後を追って進む。そうした意味でも、Jリーグの奮起を望みたい。