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2006年02月20日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言] 第29回 ◆日本の本当の実力は・・・?

 トリノオリンピックでは、メダルを期待された種目で期待はずれの結果が続き、ストレスがたまっている方も多いことだろう。しかし、関係者の話を聞くと、冷静に見てメダルの可能性があったはスピードスケートの加藤丈治くらいだったらしい。だからモーグルの上村愛子やスピードスケートの岡崎朋美は大健闘。逆に表彰台独占などと前評判が高かったスノーボードは男女ともに全滅だったが、今の日本のレベルを見ると順当な結果らしい。後はフィギュアスケートの3人娘に期待が寄せられるが、実はここでもこの内一人が表彰台に上れれば御の字というのが現実のようだ。いずれにしても、今回のオリンピックは選手も見る側も、メディアの過剰な扇動に乗せられているスポーツの現状を顕著に表す結果になっている。

 そんな沈滞ムード漂うオリンピックに対して、ちょっとだけ鬱憤を晴らしてくれたのが、18日のサッカーの日本代表戦だった。フィンランド相手に2−0での完勝。しかも長く復調を期待されていた久保のゴールと、小笠原の痛快とも言えるロングシュートでの2ゴールだっただけに、溜飲を降ろしたスポーツファンの方も多いだろう。翌日の新聞も大きな見出しで書きたてた。今年の緒戦となる1週間前のアメリカ戦で2−3と破れていただけに、喜びもひとしおだ。
 だがこれでジーコジャパンは順風満帆だと思ったら大間違いだ。日本国内で行われる試合では日本代表は強い。少なくともそのような印象がある。サッカーにはホーム&アウェイという風習(考え方)があって、国際試合を自国で開催する場合は、コンディションもいい上に、観客も味方し、その影響もあって判定も偏るから有利だという至極当然の話だが、私が日本代表が日本国内で戦う時は強いというのは、これとは全く違う理由からである。

 日本という国は、サッカーの強国が居並ぶヨーロッパや南米から地球を半周する場所にある。ブラジルからはスムーズにいっても24時間かかるし、ヨーロッパからも15時間以上かかる場所にある。その日本のサッカー協会はお金があり、そうした国々の代表チームを招待して試合をすることができる。だから彼らは遠くても日本にやってくるのだ。例えばそれが18日に行われていたフィンランド戦のような試合だ。
 しかし、そうしたチームはギリギリの日程でやってくることが多い。前日に日本に着いて、翌日には母国に帰っていくことも少なくない。そうした日程の中で彼らがベストコンディションでプレーできるわけがない。だから遠い日本への強行日程を敬遠して来日しない主力選手も少なくない。これが私が考える、日本が国内での試合に強い理由のひとつだ。そしてもうひとつ。実はベストコンディションで戦えるわけがないからこそ、彼らは全力では戦わないのだ。もちろん、そうしたチームの中にもそれぞれの事情があって、千載一遇のチャンスを得た若手プレーヤーにとっては、大切なアピールの場になるので、そうした選手が一生懸命プレーすることはあるだろう。だがこうしたことは例外だ。18日のフィンランドの場合も同様だ。元々フィンランドをはじめとする北欧のチームはその巨体に似合わず、敵陣にボールがある時からしっかりとボールを追いかけ、プレッシャーをかけるサッカーを得意としている。だがフィンランドは序盤から自陣で日本が攻めて来るのを待つばかり。そして自陣で奪ったボールを一気に前に送るという、およそらしくないサッカーをしていた。はっきり言って省エネモードの手抜きサッカーだ。
 それがなぜ許されるか? 大体ヨーロッパや南米の強国(フィンランドは強国とは言えないが)にとって、日本で日本代表と対戦した時に勝たなければいけない理由がないからだ。彼らにとっては所詮練習試合だし、まだまだサッカー後進国だと思われている日本相手に、どんな結果であろうと母国の誰も気にしない。というよりは試合の情報自体が母国に伝えられないのだ。はっきり言ってサッカー協会の小遣い稼ぎと観光と割り切って来日していることが多いはずだ。

 そんなチームに勝って浮かれている場合ではない。必要なのは冷静な分析だろう。だが現実を無視して、いたずらに騒ぎ立てるのが今の日本のスポーツメディアだ。ワールドカップまであと4ヶ月。日本の多くのメディアの予想に従えば、2勝1敗または1勝1敗1分で1次リーグ突破となる。だが実際は3連敗でも不思議はない。なぜ? それについてはまた別の機会に。

 しかし、このままじゃトリノはメダルゼロ?