最強プロモーション・心理コントロールの仕掛け人・プロデュース・ブランディング・集客コンサルティング
2006年01月19日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言]◆ 第25回 「日本選手選手権の鎖国始まる・・・。」

 16日の朝日新聞の社説よると、陸上競技の日本選手権は90回目を迎える今年の大会から外国人選手を締め出すらしい。
 元々国籍に関係なく誰でも参加できる日本一を決める大会だったが、一昨年から一部の競技で外国人選手の参加人数を制限した上で外国人の記録を参考記録として順位に含まないなどの処置を行っていた。
 さらにこれからは出場を完全に禁止にするという。

 その原因となっているが、男子長距離種目での外国人選手の活躍だ。数多い陸上競技の中で、オリンピックで2連覇を果たした女子マラソンのように、世界と対等かそれ以上の種目もある一方、世界との格差が広がるばかりの種目もある。
 その一つが男子の長距離だ。かつては、国内外の大会で多くの日本人選手で活躍し、記録的に見ても十分に対等なポジションにいた。
 だがその凋落が叫ばれるようになって久しい。その現在の日本男子長距離陣の状況を如実に表しているのが、日本選手権だったのだ。

 日本選手権に参加していた外国人選手は、この大会に海外から参加している選手ではない。日本の企業や大学の陸上部に在籍し、一緒に練習している選手たちだ。
 この中には、つい先日破られるまでハーフマラソンの世界記録を持っていたサムエル・ワンジル(ケニア:トヨタ自動車九州)をはじめ、世界的にもトップレベルの選手も少なくない。
 なぜ、レベルの低い日本の陸上界にこうした世界レベルの選手たちが来るのだろう。その理由となっているのが、日本伝統の競技“駅伝”だ。関東大学対抗の箱根駅伝や実業団対抗駅伝をはじめ、駅伝競走が人気を博し、ここで活躍のすることが大学や企業にとって、大きな宣伝材料となるのだ。
 このために力のある選手を海外から獲得しているのが実情だ。現に毎年のように、外国人選手が何人もの日本人選手をごぼうの抜きして、レースの展開を変えてしまっている。

 日本選手権から外国人選手を締め出したのは、日本人の強化のためだという。だが、それが強化に繋がるとは考えにくい。高いレベルの選手と真剣勝負の中で競い、その差を知ってこそ、世界と戦える方法を見出せるはずだ。
 むしろ、グローバル化した競技会の中で置き去りにされ、大会としての魅力を失えば、逆に日本のトップレベルの選手たちも出場を見合わせる可能性もある。いずれにしても今回の日本陸連の判断は、時代に逆行したものであることは間違いないだろう。
 せめて日本選手権くらい日本人がトップを走れる大会にしたい。関係者のそんな切実な願いなのかもしれないが…。

*************************************

●上村智士郎 さん●

Jリーグチームの応援番組の演出や、CS放送のサッカー中継のディレターを手がける一方、サッカー 専門誌をはじめ各種スポーツ雑誌、スポーツ紙、インターネットサイトに記事を掲載。またスポーツ系インターネットサイトや選手のホームページのプロデュースも行う。現在は女性向けスポーツ情報フリーペーパー「ABUSOLUTELY SPORTS」をプロデュース。

S.blend Inc 代表取締役

**************************************