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2005年12月22日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言]◆ 第22回 「今年最後。年の瀬に思うスポーツ雑景」

 今年最後の配信と言うことで、スポーツにまつわる雑感からいくつかピックアップします。
 大陸別のサッカーの最強チーム6チームが集まって、クラブチーム世界一を争ったトヨタカップ。
 昨年までのヨーロッパ最強チーム対南米最強チームのいわば決勝戦1試合の方式から、スタート以来4半世紀を経て大陸チャンピオン対抗戦へとリニューアルした。
 この大会、実は国際サッカー連盟が主催するれっきとした世界一を決める大会で、純粋にサッカーのレベルだけを見れば、ワールドカップと変わらないか、それを凌ぐ場合も多い。
 確かにワールドカップに比べて選手の顔ぶれでは劣るが、普段からトレーニングをともにしているチームならではコンビネーションは、ワールドカップではなかなか見ることができないものだ。
 そんな期待を裏切らない試合を、準決勝の南米代表サンパウロ対アジア代表アルイテハドの試合で見ることができた。
 優勝したサンパウロは、ヨーロッパ代表のリバプールに比べれば、選手の顔ぶれのメジャー感では劣ったが、チームとしてのレベルは見事だった。
 そして更に驚いたのは、対するサウジアラビアのアルイテハドのレベルの高さだ。
 個人のスキル、チームとしての完成度ともにJリーグのチームのそれを遥かに凌駕する。
 世界一の決める大会に出場するに相応しいチームで、一時は優勝したサンパウロを追い詰める展開にもなったほどだった。
 普段、海外の単独チーム同士の戦いを見ることは滅多に無い。
 特にアジアのチームは尚のことだ。こうした試合が実際に日本のスタジアムで見れることが、この大会の魅力なのだ。
 残念なのは、この試合の記者席に著名なサッカージャーナリストの顔をほとんど見ることができなかったことだ。
 彼らにとっての仕事は、カズのいるシドニーと有名選手が顔を揃えるリバプールを追いかけ、決勝戦を見ればいいのだろう。
 プロフェッショナルとは、一般の人が気づかない魅力を伝えるのが本来の仕事だと思うのだが。
 さらに残念ながら、この大会の来年以降の日本での開催はまだ決まっていないという。ぜひとも来年以降もと望むのは私だけではないだろう。

 同じサッカーでは、今期のJリーグのシーズンを終え、結果が残せなかったチームで、チームのメンバーや構成を統括するゼネラルマネージャー(GM、チーム統括部長、チーム編成部長など呼び方はまちまち)の交代が相次いでいるようだ。
 実はJリーグでは、これまでその下の監督の交代で、問題の処理を終わらせることが多かった。
 だが実際に責任を負うべきは、その監督や選手を選んだポジションの人間だ。もちろん、監督ほど頻繁に首を代えていってはチーム編成もあったものではないが、一定の期間を見て結果が出なければ、新しい力を求めるべきポジションだ。
 だが現実には10年近くに渡って同じ人物がこのポジションにいるチームもあるくらいだ。
 J2に降格したチームが、これを機会にこのポジションの人物を代えたのなら、それはとても良い。だがもう1年早くそれに気付いていれば、降格することもなかったかもしれない。
 そうしたチームもその予兆は十分にあったのだから。
 新しく生まれ変わったチームの新シーズンを期待しよう。

 こんなサッカー話より日本人の多くが注目しているのが、フィギュアのオリンピック出場問題だろう。
 私は今週末の全日本選手権で、年齢制限のために出場資格の無い浅田真央が優勝をすれば、彼女の出場の可能性は高いと思っている。
 それは今、判断を示している国際スケート連盟や日本スケート連盟の判断ではなく、IOCの判断だ。
 IOCは兼ねてからオリンピックはすべての競技で世界ナンバー1を決める大会にすべく、多くの努力をしてきているし、だからこそ途轍なく高額な放送権料が支払われているのだ。
 現在、それが適っていないのはサッカーと野球。
 野球は世界的に見ればマナースポーツだから除外すればいいだけだが、サッカーはワールドカップを世界一決定戦とする国際サッカー連盟との間で毎回せめぎ合いをしている。
 そんなIOCが、明らかに世界一の選手が、年齢の問題だけで出場できないことを放っておくとは思えないのだ。
 どこかで“超法規的な”判断があってもおかしくない。いずれにしても、彼女が世界一であると同時に日本一にもなることが、絶対条件だと思われるのだが。

 最後は同じオリンピックのお話。今年の9月、石原都知事が2016年のオリンピックの東京招致を正式表明したことを皆さんはご存知だろうか?
 都知事は埼玉や神奈川の施設も利用することも念頭にする一方、国立競技場や神宮球場周辺の大規模なリニューアル。
 更には代々木公園に新しいスタジアムの作ることも言質したようだ。
 今の東京に、10年後の東京にオリンピックが必要だろうか? 多額の税金を投下して、まさに都会のオアシスである代々木公園を潰し、大型の作業車が行き交う東京を誰が望んでいるのか?
 もちろん日本にとっての前回の東京オリンピックにように、オリンピックが街づくり、国づくりの転機となる一大イベントとなる場合もある。
 だがオリンピックの開催は一瞬の夢である。生活を不安の多くを抱える今の日本に必要なのは、夢ではなく現実なはずだ。
 日本も東京都も膨大な財政赤字に喘いでいて、特に東京都は毎年福祉予算を削り続けている。
 にもかからずのオリンピックの招致表明。自分の名を歴史に残すために大イベントの開催を画策する政治家の思惑に惑わされること無く、都民の声、国民の声として、本当に必要なものを見極めていきたいものだ。

 今年最後のコラムも最後まで読んで頂いてありがとうございました。
 Merry Chritmas & A Happy New Year!

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●上村智士郎 さん●

Jリーグチームの応援番組の演出や、CS放送のサッカー中継のディレターを手がける一方、サッカー 専門誌をはじめ各種スポーツ雑誌、スポーツ紙、インターネットサイトに記事を掲載。またスポーツ系インターネットサイトや選手のホームページのプロデュースも行う。現在は女性向けスポーツ情報フリーペーパー「ABUSOLUTELY SPORTS」をプロデュース。

S.blend Inc 代表取締役

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