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2005年11月24日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言]◆ 第18回 「2005年11月20日 日曜日」

 関東地方は11月の3週目に入って、早くも冬本番の到来間近を実感せずにはいられない真冬ならではの澄み
切った青空とそのおまけについてくる寒さに見舞われていた。11月20日。この日もやはりそんな天気だった

 この日、高橋尚子はそんな好コンディションの東京を駈け抜け東京国際女子マラソンで優勝。宮里藍、タイガ
ーウッズも期待通りの優勝を果たし、優勝争いが混沌としてきたJリーグは全試合が一斉に行われ、ヴィッセル
神戸の2部降格が決まった。海外からは天才少女と称される女子フィギュアの浅田真央のシニア大会で初優勝、
スピードスケートでは20歳の伏兵、加藤条治の世界記録の報がもたらされた。

 そんなスポーツ満載の日曜日。私が足を運んだのは有明テニスの森で行われてた全日本テニス選手権男子シン
グルス決勝。正直言って、友人に誘われて付き合いで“顔を出した”大会だった。確かに日本一を決める大会で
はあるが、グローバル化したテニスの世界で、この大会では、日本人と言えども世界ランキングを目指すような
選手のプレーは見ることができない。それでも女子スポーツ全盛の余勢を駆ってか、前日の女子シングルスでは
15歳の森田あゆみが優勝し、この日のスポーツ新聞の1面を飾ったが、やはり男子は地味な印象が強い。

 決勝の対戦は岩淵聡と添田豪。大会のメインイベントに相応しい第1シードと第2シードの対決となった。が
、そのレベルはやはり世界とは程遠く、例えば世界のトップレベルが時速200キロを超えるサービスを放つ中
、この二人の最高速は180キロ止まり。岩淵のセカンドサービスに至っては120キロという数字が場内に表
示される。
 しかし試合は白熱した。30歳のベテラン岩淵に21歳の新鋭添田が挑む構図の通り、第1セットを岩淵が取
ると、第2セットは逆に添田が一方的なスコアでリベンジした後、最終セットもお互いに死力を尽くす一進一退
の試合展開となる。
 自らを鼓舞しメンタルの弱さに打ち勝とうするかのように声を発し、大きなアクションを繰り返すベテラン岩
淵は、肝心なところでそのメンタルの弱さを露呈し自滅を繰り返す。序盤は今の若者らしく飄々とプレーしてき
た添田も、激戦の中で気持ちが高揚し、徐々に岩淵のプレースタイルに引き込まれたか、プレーにも力が入り、
プレー後にも時折大きなアクションを見せるようになる。が、するとこちらもそれが力みに繋がる。テニスがメ
ンタルスポーツあることを実感させられる、ジリジリとしたものが場内に伝わってくる。

 そして試合はタイブレークにまで持ち込まれた。だが一瞬の休憩を挟んで、再び向き合った二人の体からは迷
いや力みが消えているのが分かる。そこまで力の限り戦い続けた彼らの体に何かが宿ったのだろうか? その後
二人は最高のパフォーマンスで戦い、試合は終了した。試合開始から約2時間。勝利の女神はベテラン岩淵に微
笑んだ。5回目の挑戦での初タイトル。岩淵にとって、プロ11年目にしてつかんだ念願の“日本一”のタイト
ルだったのだ。
 私は、日ごろ理屈や理論を捏ね回し、プレーや戦術をこき下ろす文章を書いている。だが、この日の試合はそ
んなものを忘れさせてくれる試合だった。スポーツを見ることの本質的な楽しさやスポーツの持つ本来の魅力を
思い出させてくれた素晴らしい時間だった。一つの目標を目指して真剣に真摯に戦う姿は清々しくまた魅力的だ
し、だからこそそこに生まれるドラマは感動を呼び、「また見たい」と思わせてくれるのだろう。
 関係者によるとここ数年、この大会の観客は徐々に増えているそうだ。こんな素晴らしい試合が見れるのであ
れば、来年以降もぜひたくさんの人に足を運んでほしい。
 最後に「岩淵選手、優勝おめでとう。そして両選手ともありがとう」

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●上村智士郎 さん●

Jリーグチームの応援番組の演出や、CS放送のサッカー中継のディレターを手がける一方、サッカー 専門誌をはじめ各種スポーツ雑誌、スポーツ紙、インターネットサイトに記事を掲載。またスポーツ系インターネットサイトや選手のホームページのプロデュースも行う。現在は女性向けスポーツ情報フリーペーパー「ABUSOLUTELY SPORTS」をプロデュース。

S.blend Inc 代表取締役

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