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2005年10月01日
[スポーツライター上村智士郎の業界人独り言]◆ 第11回 楽天監督解任騒動に考える…

 今週のスポーツ界は、東北楽天ゴールデンイーグルス田尾監督の解任問題に揺れている。
 この解任の是非を問う、さまざまな声が各メディアを賑わせているのは皆さんがご存知の通りだ。
 諸々の意見はあるだろうが、私はこの解任には賛成である。その理由は次の通りだ。
 まずはともかく負け過ぎである。

 97敗で辛くも“目標”の100敗は阻止したと言っても、1位でレギュラーシーズンを終えたソフトバンクが89勝にあげたのに対してゴールデンイーグルスは僅か38勝止まりである。
 100敗阻止自体を評価の対象とするのは無理な話である。
 もちろんこの成績のすべてが田尾監督の責任ではない。
 チームの成り立ちや予算的な事情から生じる選手層の薄さがその最大の要因だ。
 だがプロスポーツである以上、最下位だったという事実に対して誰かが責任を取るべきだ。それは来シーズンへの布石にもなる。
 そのスケープゴートには監督というポジションはうってつけなのだ。
 これできっと選手たちは「やっぱり勝たないとまずいんだ」と痛感したはずである。
 くびになることも監督の仕事のひとつと考えるといい。
 次に営業面の好調を田尾監督の功績にする意見が少なくないようが、これは恐らく筋違いだ。
 確かに現役時代から人気選手だった彼の華やかさと爽やかなイメージは、集客に一役買っただろう。
 だが、これだけ負け続けたチームがスタジアムを一杯にするには、表舞台には見えない営業部隊や地元協力者の皆さんの並々ならぬご苦労があったはずだ。
 開幕当初は昨年からの球界再編問題の余波を駆って、順調な滑り出しだったかもしれない。
 またJリーグのベガルタ仙台のおかげで満席のスタジアムで応援するという楽しみを覚え、でも、そろそろ「サッカーもなあ……」と思い始めていた仙台市民、宮城県民にとって、新しい娯楽の提供には絶好のタイミングだったかもしれない。
 だが、そうした追い風に重石を付けていたのが、目を覆うばかりのチーム成績だろう。
 阪神タイガースのように歴史のあるチームなら“負ける悔しさ”も応援の醍醐味だろうが、1年目のチームにそれが定着したとは考えにくい。
 それでもなおフルキャストスタジアムはほぼ満員の試合を繰り返し、事業的にも結果を出していることは驚きに値する。
 だが、いつまでもそれが続くとは限らない。
 経営者としては来るべき時のための保険をかける意味も含めて、一日も早く成績面でもチームに上昇線を描かせてくれる指揮官の就任を望む。
 それは至極当然で健全なことだと思う。
 それにしても、楽天の三木谷社長は、スポーツチームの経営に関してはなんと人に恵まれていないことか。
 この楽天ゴールデンイーグルスにしても、サッカーのヴィッセル神戸に関しても同様の感想を持つ。
 この場合の“人”とは本来の意味で経営を司る責任者や監督というポジションではなく、言わばその間にあたる“GM”“チーム編成部長”“チーム統括部長”などと呼ばれるポジションのことである。
 監督も含めたスタッフと選手を選び決める役割の人物である。
 もちろん、そのスポーツに関する優れた見識や広い人脈、私事を省みないバランス感覚を併せ持つことを求められるこのポジションにうってつけの人材には、滅多に巡り会えるものではないことも現実ではあるのだが。
 「企業は人なり」と言われるのと同様に「チームは人なり」である。
 そのことは日本のプロ野球界で長く“盟主”の地位を謳歌してきたチームの凋落振りを見れば一目両全だろう。
 その“人”を身近に置けるかが三木谷社長のスポーツチームの経営における大きな課題に思える。
 ゴールデンイーグルスの次期監督には野村克也氏の就任が確実視されている。
 彼ならば実績、人格ともに申し分ない。野村監督の下へとはせ参じる選手、スタッフも少なくないはずだ。
 何より球界の裏の部分を知り尽くしてる数少なく人物の一人であることが、ゴールデンイーグルスにとって将来に繋がる大きな財産になるはずだ。
 失礼ながら古狸と言って間違いない野村氏の監督就任が、スポーツチームの経営に関して三木谷社長に新しい風を呼び込む可能性は少なくないだろう。



 


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●上村智士郎 さん●

Jリーグチームの応援番組の演出や、CS放送のサッカー中継のディレターを手がける一方、サッカー 専門誌をはじめ各種スポーツ雑誌、スポーツ紙、インターネットサイトに記事を掲載。またスポーツ系インターネットサイトや選手のホームページのプロデュースも行う。現在は女性向けスポーツ情報フリーペーパー「ABUSOLUTELY SPORTS」をプロデュース。

S.blend Inc 代表取締役

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